スペインの自動車メーカー「SEAT」が、AI技術の活用に取り組んでいます。
ドライバーの頭の動きや目の動きを追跡し、ドライバーが眠気を感じているか、居眠りをしているか、注意力が散漫になっているか等を検出できるということです。
紹介動画をどうぞ。
SEAT社のXplora部門は、コネクテッドカーやスマートモビリティのイノベーションでパートナーとなる企業を探すために2017年に設立されました。(リリース記事参照)
このプロジェクトでは、Xplora部門はイスラエルのEyesight Technologies社と提携して取り組んでいます。
交通事故の原因の36%はドライバーの疲労と注意力散漫
欧州委員会の調査によると、ドライバーの疲労と注意力散漫が交通事故の原因の36%を占めているということです。
SEAT社の製品イノベーション部門責任者のStefan Ilijevic氏も以下の様に言っています。
欧州の交通事故の90%以上は人為的要因によるものだ。そしてその主な原因として、注意力散漫や疲労、過度なスピード、アルコールや薬物などが挙げられる。
道路から目を離すな
本プロジェクトで活用されているスマートカメラ技術で、ドライバーの目の開き具合、視野角、まばたき率、頭の位置に加えて、その他の視覚属性を評価することができます。
ドライバーが眠気や居眠り、スマートフォンに気を取られていることをAIモデルが検知すると、アラートが発動します。AIがドライバーの動きから危険を予知して警告してくれるという仕組みです。
また、同じ技術を使って過去の運転履歴からドライバーを識別し、好みに応じてシートやミラー、暖房設定などの車内機能を調整することもできるそうです。
最終的には、この技術で歩行者を検知して、ドライバーがその歩行者を発見できているかどうかも分析できるようになるということです。
アライアンスを広げソリューションに幅を持たせる
またSEAT社では本プロジェクトのひとつの取り組みとして、イスラエルの別の企業であるGauzy社とも協力しています。Gauzy社の「アクティブグレージング」といわれる技術を活用して、ユーザーが必要に応じてフロントガラス、サイドウィンドウ、サンルーフのガラスを暗くしたり明るくしたりすることを可能にします。
ドライバーは、法律で定められた範囲内で窓を暗くして太陽の光がまぶしくならないようにしたり、暗い環境や天候に合わせて窓を明るくしたりすることができるようになるわけです。
また併せて、ハンドル操作の過失を防ぎ、交通事故を大幅に減らすためのソリューションにも取り組んでいます。
Xplora部門は、ドライバーの健康と安全性、自動車のサイバーセキュリティ、製造プロセスの持続可能性を向上させるソリューションを見つけることを任務としていて、部門設立後わずか2年の間に200以上のイスラエルのベンチャー企業との協業を進めています。
SEAT社は、自社だけのリソースやノウハウだけに拘るのでなく、外部の企業がもつ強みをうまく活用していることがわかります。
アライアンスを広げソリューションに幅を持たせ、提供できる価値の拡大に取り組んでいます。この姿勢は企業規模に限らず、参考になるのではないでしょうか。
消費者目線で見るスマートカメラが溢れる社会
AIによる画像認識技術は、AI技術活用の中でも取り組みやすいジャンルではないでしょうか。様々な分野で活用が広がっています。
しかし、テクノロジーを有効に活用するには、消費者目線で考えてみることも重要です。
スマートカメラをはじめ、AIやIoTなどの先端IT技術は、今後ますます制御と監視に利用されていきます。それは僕らにとってメリットにもデメリットにもなりえます。
事故防止や犯罪防止など、安全安心の社会に繋がる活用もあれば、プライバシーが晒される監視社会への手助けにもなりえてしまうわけです。
僕らは、プライバシーと利便性をトレードしなければいけない時代に生きています。しかしどちらを選ぶかは人それぞれ、都度僕たちが決めていくべきです。
そのためには、AI技術の利用やIoT機器を利用する代償として僕たちの何を差し出しているのかを知ることです。そうすることで、消費者と事業者の関係が健全な状態になり、安心で安全な世の中づくりにつながっていくのではないでしょうか。