いま僕たちは大変革の時代に生きています。
歴史を振り返ると、これまでに起こったイノベーションは、災害や大不況など「非常時」がきっかけに起こっています。僕たちは、十数年前の金融危機に続くフィンテックの台頭と同じ現象を見ることができます。
今回の新型コロナウィルスの登場は、世界の人々にさらに大きな変化をもたらすはずです。アフターコロナの世界では、次の技術革命の原動力となる2つの新技術が注目されています。5GとAIoTです。
AIoTとは何か?
5Gについては聞いたことがあると思いますが、AIoTは初めて聞く人が多いかもしれません。
AIoTはSHARP社が作った造語です。
AIoTとは、AI(Artificial Intelligence:人工知能)とIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を組み合わせてシャープが作った造語です。単にモノがインターネットに接続してデータをやり取りするだけでなく、人工知能によって学習し、成長するシステムを目指しています。シャープのAIoTは、もともと家電製品やモバイル機器のために生まれた技術ですが、これをビジネス用途に展開することにより、幅広いビジネス領域で、デバイスのIoT化、サービス連携、自動応答など音声対話などを容易に実現することが可能です。(参照)
現代社会では、ポケットに入る電話からキッチンのスピーカーまで、たくさんのスマートデバイスに囲まれています。これが、モノインターネット(IoT)と呼ばれるものです。
スマートデバイスは、テクノロジーによって僕たちの生活を向上させるように設計されています。しかしそのほとんどは、IoTの恩恵を十分に得るためにユーザーの入力や指示を必要とします。
そこでAIoTの登場です。
AIoTでは、僕たちがこれらのデバイスを手動で制御を不必要とすることを目的としています。AIoTデバイスが僕たちの行動や習慣を学習し、指示や入力をしなくても、最適なタイミングで最適な動作を提供してくれるようになります。
AIoTがある風景
例えば、帰宅風景を想像してみましょう。
IoTの世界では、帰宅の様子はこんな感じだったかもしれません。
車で家に到着すると、キーホルダー型のボタンを押して車庫のドアを開けます。車を車庫に停車したあと、玄関へ向います。玄関の鍵はスマートキーとなっていて、スマホに入っている専用アプリを使って玄関の鍵を開けます。部屋の明かりをつけるために部屋に設置してあるスマートスピーカーに命令します。「OK、グーグル。部屋の明かりをつけて」。
もちろん、こういった作業を事前にスケジュールしておくことも可能です。しかし、もし仕事で帰宅が遅くなった場合はどうでしょうか?あらゆる可能性のために複数のスケジュールを用意しておくのも微妙です。
IoTを活用した理想的なスマートホームの形にはまだ道のりがありそうです。
これが、IoTデバイスの代わりにAIoTデバイスを使うとどう変わるのか。きっとこんな感じになるかもしれません。
自動運転車は、車庫のドアについているスマートロックと自動で通信して、車が到着するとすぐにドアを開けてくれます。車から降りて玄関に向かうと、玄関ドアの顔認識機能付きスマートロックは、あなたが近づくとあなたのことを認識してドアのロックを解除します。そして、自動でスマート電球のスイッチを入れ、室内のセンサーが部屋の温度を快適なレベルに調整します。こういったことが全て、自分が特定のデバイスやアプリに触れることなく、自動で処理してくれます。
数年前にこういった話をすると「いやぁ、それはSFの世界の話で実現するのはまだまだ先じゃないの」という声もありました。
しかし、現在のテクノロジーの進化を目の当たりにすると、こういった世界がすぐ目の前にきていることを実感できるのではないでしょうか。
ようこそ、5Gの世界へ
AIoTの発達と普及には、5Gが必要不可欠です。
AIoTがユビキタスになるためには、その背後にあるインフラが必要です。5Gのさまざまな実装における柔軟性は、より多くのデバイスがAIoTを活用できるようにするための重要な鍵となります。
・eMBB(enhanced Mobile Broadband:拡張モバイルブロードバンド)
・URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications:超高信頼低遅延)
・mMTC:(massive Machine Type Communication:超大量端末)
こういった技術的要件を満たすことによって、多様なAIoTアプリケーションを実現することが可能になります。
アフターコロナの世界でAIoTの普及が加速する
新型コロナの影響による経済危機は、確実にAIoTの普及を加速させるはずです。
例えば、顔認証や音声インターフェースなどの非接触型インターフェースの活用です。
コロナのおかげで、病気を感染させる可能性のあるあらゆる接触可能な表面を非常に意識するようになりました。そのため、アフターコロナの世界では、タッチスクリーンは少なくなり、音声インターフェースなど非接触で操作可能なインターフェースが増えると予想できます。
パンデミックの前には、モバイルデバイスを使った非接触型の支払い方法が普及していました。しかし今、触るものを制限したいと考える人が増えているため、物理的な接触を必要としない商品やサービスの支払い方法が普及する可能性があります。(参照記事)
しかし、最も重要な変化は、新型コロナウィルスが多くの消費者の思考や習慣を変えたことです。
より一層、健康的で安全なライフスタイルの要求が高くなりました。この「新しい生活様式」は、5GやAIoTの採用を後押しすると見られています。
特に、ヘルスケア分野のAIoTソリューションの市場は大きく成長するはずです
具体的には、今後ウイルスの感染経路を追跡して拡散を抑制することが求められるため、ウィルス検知のさまざまな側面でAIoTが重要な役割を果たすことができます。
例えば、熱センサーを備えたAIoTデバイスを使って、感染した人を特定するのに役立ちますし、ウェアラブルとAI技術を併用することで、交流した(接触した)人とのコミュニケーションを追うことができます。
スマートウォッチなどのウェアラブル機器は、自分の健康を管理したいと考える消費者の最初のとっかかりになっています。今後は、ウェアラブル以外のテレビやカメラのような日常的なデバイスでも、健康を目的としたAIoTアプリケーションがますます多く見られるようになるのではないでしょうか。
さいごに
アフターコロナの世界では、非接触によるアクションが可能なソリューションが求められるようになるはずです。
新型コロナは
・非接触
・デジタル化
・リモートワーク
・健康管理
などの必要性と重要性を僕らに再認識させてくれました。
デバイスメーカーを含むあらゆる事業者は、新しい消費者のニーズに適応する必要があります。5GとAIoTが、アフターコロナの新しい世界で、僕たちに必要な技術の中心になるのではないでしょうか。